「色川のほうじ茶ティラミス」と「まりひめいちごコンフィチュール」
ほうじ茶の芳ばしい香りとクリームの上品な甘さが心地良い「色川ほうじ茶のティラミス」。完熟した「まりひめいちご」を贅沢に使った、バラのような芳醇な香りが漂う「まりひめいちごコンフィチュール」。地域の生産者さんがこだわりを持って育てたお茶やフルーツが、嶋本さんの手によって美味しく美しいスイーツになりショーケースに並びます。生産者さんの思いやこだわりを理解したうえでお菓子に取り入れられるようにと、食材はなるべく顔を合わせた農家さんから直接仕入れています。
地元の方はもちろんのこと、遠方から嶋本さんのお菓子を求めて足を運ぶ方も少なくありません。2016年にスタートし、2021年11月に現在の新店舗でリニューアルオープン。商品は1,2週間ほどで入れ替え、常時約25種類の生菓子を作り揃えています。頻繁に入れ替えるのは、その時々の美味しいものを使うことと、店内から街のようすや変化を眺めながら嶋本さんが気分で変えていくからだそう。お客さんは平日で80組ほど、休日になると100組から150組ほどが訪れるといいます。
「色川ほうじ茶のティラミス」に使用しているのは、お茶の名産地色川のほうじ茶。那智勝浦町の山村で、「両谷園」さんが無農薬で育てた茶葉を仕入れ、粉末にしてクリームに混ぜ込んでいます。開業当時から6年間、唯一続いているロングセラー商品です。
「まりひめいちごコンフィチュール」には、那智勝浦町太田地区の「太田農園」さんが育てた和歌山ブランドの「まりひめいちご」をふんだんに使用。まぐろを元にしたボカシ肥料を使うなど、こだわりをもって作られたいちごは「香りも味も格別」だと嶋本さんは言います。艶のある鮮やかな赤色のいちごで、甘味が強くほどよい酸味があります。
生産者さんとお客さんの期待にこたえ続けるお菓子作り
「太田農園さんとかは本当に試行錯誤をされていて、人生をかけて農業をされている感じがするんです。そこに負けないようなお菓子というか、生産者さんが思いをもって作られた素材を、お客さんにしっかりと伝えれるようなお菓子作りをしないけないと思います」と嶋本さん。自分が育てた果物を使った商品が出ると、毎年買いに来て周りの友人などに紹介する農家さんもいるといいます。嶋本さんなら、育てた素材を使って美味しいお菓子に仕上げてくれるに違いない。生産者さんたちのそんな期待に応えるように、嶋本さんも丹精込めてお菓子作りに励みます。
「お菓子は、生活必需品ではなく贅沢品。日常に彩りをあたえるものであり、そうでしかない。それでもお客さんが“選んで”買いに来てくれるので、必ずその期待に応えないといけないと思うんです」。嶋本さんの口からはそんな言葉も聞かれます。
「この辺りには、煌びやかなショーウィンドウのお店があるわけでもないですし、有名なアーティストがライブをするわけでもない。都会と比べて、日常のなかで心が弾むような機会は少ないと思います。なので、RaReのお菓子がそんな機会の一つになればと強く思ってます。この地域の人たちにはいつでも心が豊かで、いろんな物事に触れたときに何かを感じれるような心情であってほしいんですよね。毎日美味しいものを届けて、お客さんに良い気持ちになってもらう。それが、僕がこの地域にできることかなと思っています」。
誕生日やクリスマスなどの特別な日も、ふだんの何気ない日も食べたくなる。そんなPatisserie RaReのお菓子を求めて、今日も多くのお客さんがお店に足を運びます。