太田地区で暮らす住民の交流や地域活性を目的とした「太田の郷」で地域おこし協力隊として3年間働いた後、同じく「太田の郷」にて集落支援員として活動の幅を広げています。今回は、地域おこし協力隊の任期終了後も太田の方々と共に活動を続けることを決めた谷口さんに、協力隊時代からの変化や現在の暮らしなどについて伺いました。
地域の人たちとともに、地域の今と未来を考える集落支援員という仕事
-地域おこし協力隊の活動を終えて、今はどんなことをされているのですか?
実は協力隊のときとは全然違う仕事をしています。集落支援員といって、本来なら地域になじみのある人が受け持つ仕事なんですけど「支援員になって」と地域の方から声をかけていただきまして。協力隊は活性化を目指していろんなことをしてここを発展させていきますが、支援員の仕事は、ここをどうやって継続していくかという仕事になるから、もっと深いところまで追求できる仕事だと感じます。まあ、自分の行動だけじゃなくなっちゃったのも一つ。農業関係の事務仕事、福祉プログラム、ご高齢者のお一人住まいのご自宅訪問、地域の課題整理と仕事内容は多種多様!事務仕事は増えたけど外仕事も増えてね、面白いよ。
-つまり仕事が増えた?
増えた。そうなんです(笑)。でね、住まいもこっちに引っ越してきたんです。前は勝浦に住んでいましたが、もうこの仕事をするならば引っ越してこようと思って。そしたら、やっぱりこの仕事に合っていました。普段から地域の人たちと話す機会が増えるし、いい気づきや課題も見えてくる。寄り添う支援を目標にしているので、住んで良かったと思っています。
ほかには、地域福祉の取り組みも少しづつ始めています。地域おこし協力隊のころから伝承プログラムを進めてきました。今回はより具体的に、小学校の保護者の方と子供と地域の方々が関わっていくきっかけ作りとして、夏休みプログラムの中で渋柿づくり、流しそうめん作りやいろいろと取り組みました。地域のおじいちゃんたちの技を子供に教えてあげてほしいと頼み、一緒に竹を切りにいったり。そうそう、この前の福祉プログラムなんかでは縄作り競争。15分で7メートル以上を編み上げるおばあちゃんたち。手に染みついている作業を皆ですると楽しそうで「じゃあ今度は、草履教えたるわ」とか「こんなものうちらしかできんよな」ってなっていく。このこぼれた言葉が宝!この積み重ねが継続になるのかなって。
太田の食を詰め合わせた「かほり箱」に寄せる思いと、今後の課題
-太田のお野菜の詰め合わせで、「かほり箱」というものがあると思うのですが、それについて教えていただけますか?
もともとは3年くらい前に農家さんから「真実ちゃん、ちょっとみんなの野菜を集めた箱を作りたいんよね。」と宝のアイディアが出て「オッケー、分かりました!やりましょう!」と農家さんと詰め合わせを作ったんだけど、名前どうする?って。話し合っているうちに太田のかおりが、みなさんが箱を開けたときに伝わるように「太田のかほり箱」と名付けました。香りのことをこっちでは「かほり」っていうんやよ。
太田の生産者と加工品を作っている人たちの作品よね。一つの箱にみんなの思いが詰まっているロマン箱と私は思っています。けっこう喜ばれてね。太田を出て、東京や北海道と各地に住んでいるじゃないですか。故郷を離れた人たちが太田のかほり箱を開けて、生産者の名前を見たときにみんなの顔が浮かんだんやって。「この人の野菜なんや、めっちゃ嬉しい。」「ああ懐かしいよ。久しぶりに連絡しよう。」と。ここを離れた方々に太田を感じてほしいなと思います。でも、少しずつ太田以外の方々からも注文をいただいています。太田のかほりをみなさんにお届けします。
-「かほり箱」の野菜について、基準や規格はどうしているんですか?
それは、A野菜かB野菜かということ?私から農家さんには何も指定していません。ただ農業者の皆さんの判断でA野菜を出荷くださいます。B,Cとおまけで持ってきてくれるんだけど、それが課題でね。たとえば太田の「かほり箱」があって、そのために種を蒔きました。もちろん他の出荷場所もあるじゃない?その数を計算して植えてると思うんや。そこに入らなかったB,Cの子たちをどうしようかと話を今しているところで。私もいま考え中なのよ。
農家さんでない人たちは、スーパーで売っているものがそのまま土に埋まっていると思っている人もいるわけじゃない。不揃いって知らない人たち。でも不揃いっていうのは、野菜の魅力かなって思ってるんだよね。たとえば根の真ん中に石があって二股になっちゃった大根とか、ようあるやん。株が割れちゃった白菜がまかないとか。本来の野菜の形を売り出すのがふつうというか、そんな感じで思っていて。そこの発信の仕方を考えないといけないなっていうのが今後の課題です。
農家さん、お客さん、両方に嬉しいアイディアを探す
-詰め合わせの内容は?
今回の野菜は9品。ラディッシュ、ほうれん草、にんじん、里芋、さつまいも、キャベツ、いんげん、サニーレタス、チンゲンサイ。あとネギも入ってた!それから、おはつのお味噌、イチゴジャム、米1キロ、お米のパン。すごい量。箱の蓋が閉まらないところを閉めたから、バキバキになってるんじゃないかと心配したけど、大丈夫でした。パンがクッション材になってないかと思っていたけどふわふわでお届けできました。(笑)。こうやって作っていくと、地域の方々から「漬物もいれるのはどうかな」と宝アイディア。これがたまらんく嬉しいです。
-「かほり箱」を通して、何か目指しているゴールはありますか?
私が外れても自主生産でできていったら嬉しいよね。魅力づくりじゃないけど、探しはあるけど、そういう商品がいっぱい生まれてきたら面白いなと思ってる。「かほり箱」は続いていくと思うんだけど、そういうのを各農家さんがやったらめっちゃ面白くない?「次はあのところの箱にしようかな」とか、選択肢が増えたら面白いですよね。大きく言ったらここに農家さんが増えることがゴールだよね。こういうことができるんだなっていうのが、新しい農家さんの目標になったらやりやすいやん。売り先どうしようかなじゃなくて、「あ、こういう方法もあるんや。」って。そういう道になればさ、よくない?
-若い農家さんもいますか?
農家さんは30代からいます。20代はいないのかな。でも小学校三年生の農家さんたちはいるよ。長期休みにいろんな野菜を収穫して、洗って袋詰めして直売所で売って。けっこうお小遣いになったんやと。「そのお金はどうするの?」って聞いたら「次の種買う」って。すごくない?
行く先々で見つける、その土地の面白さ
-勝浦の海の近くから太田に引っ越してきたということですが、太田での暮らしは満喫していますか?職場も近くて行動範囲が狭くなりそうな気もしますが、どうでしょう。
満喫しまくりですね。家によく地域の子供たちがくるから。地域の方も来るし。公民館みたいな感じになってるかもしれない(笑)。みんな来て解放してる。そんな家。うちじゃあ絶対シャキッとできる人いないよ。一人暮らしでもたま~に一人っていうくらい。みんなで映画観たり、たき火したり楽しいよ。勝浦に住んでいたときはね、通勤中に「鯛いるか?」って漁のおじさんが渡してくれるわけよ。生で袋に入れて。こっちでは家の扉を開けたらボンと野菜が置いてあったりする。面白いよね。誰の?みたいな(笑)
行動範囲が狭くなることはないわ、私の性格上。でもこっちはこっちでいいよ。勝浦とはちょっと別世界だな。湿度とかもたぶん違うんじゃないかな。海っぽいじめっていうのもないし、霧がすごい。山の自然を感じるのはこっちやね。天体観測とか最高だよ。庭にベッド置いてみんなで流れ星見たり。流星群とかチェックし始めてる。
-行く先でその土地の楽しみ方を見つけるんですね。食生活とかも変わりましたか?
たとえ砂漠でも楽しんでますよ、たぶん(笑)。食生活もめっちゃ変わりました。勝浦では町によく出かけて行っていったし、こっちだったら野菜がメインになってる。あと加工品というか、保存食をいっぱい作るようになりました。加工といっても、ハーブとかを乾燥してブレンドして飲むとか。畑で野菜を育てていて、いま植えてるのは唐辛子と、ハーブ、スナップエンドウ、ラディッシュ、カブ、サニーレタスと、そんな感じかな。
前も畑はしてたけど、今は庭が畑だから調理中に畑で摘み取ってきて入れるっていう感じの生活です。食に関する挑戦の幅が増えましたね。勝浦は遊びの幅がすごかったけど、こっちでは食っていうところが面白い。クラフトコーラをつくったり、薬味、漢方とかをやってみたり。
-本当にその所々で楽しんでるんですね。
楽しんだもの勝ちだよ(笑)